今、田縁の田んぼには、緑濃い絨毯を敷き詰めた美しい風景が広がっています。
その田んぼの稲苗の根元あたりに群がるジャンボタニシたち。根絶することが難しく多くの農家からは厄介者扱いですが、田縁の田んぼはジャンボタニシと上手に付き合いながら無農薬栽培を続けています。
稲作の無農薬栽培で最大の難関は、草取り!
昔の人たちは、なんとか雑草の被害を少なくしようと、知恵を回してきました。ただ、どの方法も労力や手間がかかり、大変な作業でした。
30年くらい前の糸島で、ある農家が減反で稲を植えられなくて、代かきしてそのまま水を貯めていた田んぼを見て驚きました。
「1本も草がない!」
よく観察すると、稲を食べる害虫とされ始めていたジャンボタニシが田んぼ一面を動き回っていました
「!」
これは除草剤よりも凄いじゃないか。
ジャンボタニシに草取りだけをさせられないだろうか?
ここから、地元の農業改良普及員との協力でジャンボタニシによる除草法が生み出されていきました。
ただ、どこでもこの方法が使えるわけではありません。
次の3つの条件がそろって初めて、ジャンボタニシが稲を食べずに草だけを食べてくれるのです。
(1)水管理(田んぼへの水の出し入れ)がこまめにできること
(2)田んぼの表面の高低が少ないこと
(3)大きな苗を植えること
この中でも(1)が一番重要。
ジャンボタニシたちは自分の貝殻が水に浸っていないと自由に動けない性質を持っています。
そのため、田植え後1〜2週間は、こまめな水管理で田面が乾かない程度にひたひたの少し水がある状態に保ってやると、イネの苗を食べられることはありません。
そして、小さな雑草が生え始めた頃に水をたっぷりと貯めてやると、柔らかい雑草の新芽をくまなく食べてくれます。
これは、私たちの田んぼが山手の棚田で川上にあり、ほぼ自由に水の出し入れができるのでかなっていること。
しかし、川下の平地では、川上の田んぼから順番に水を使うので思いどおりに水が使えません。また、除草剤の効果を高めるために、田植え後すぐに水をどっぷりと貯めてしまいます。まだエサとなる雑草が生えていないので、ジャンボタニシたちは仕方なく稲の苗を次々と食べてしまうのです。
そのため、ジャンボタニシを駆除しようと、さらに農薬を使わざるを得ない現実には心が痛みます。
(2)と(3)については、私たちも毎年がんばっています。
(2)は、冬場の田んぼの高低直し、代かき前の田んぼの四隅の高低直しと丁寧な代かき。
(3)は、苗箱の数は増えますが、みのる式のポット苗を育てることで、5枚の葉が出ている大きな苗を田植えしています。
こうやって、もともと生息していたジャンボタニシと上手に付き合いながら、私たちは無農薬の米作りをやっていますが、ジャンボタニシが生息していない田んぼに新たにジャンボタニシを入れての除草はしないで下さいね。
掌をぱあっと広げたような葉形になった姿は、稲苗が健やかな証拠。今のところ田縁の田んぼとても順調です。
去年は田植え後に大雨が続き水路が止められ、ジャンボタニシも働けず草ぼうぼうになってしまいお米は不作でした。
しかし、今年は細かな水管理と調整ができ、ジャンボタニシにも除草してもらったので、雑草のない綺麗な田んぼで元気に稲苗が育っています。
author by 川口
photo by mc